| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-162  (Poster presentation)

特定外来生物 ナガエツルノゲイトウの効率的な駆除手法の検討及び枯死条件の推定【O】
Efficient eradication methods and estimated lethal conditions for alligatorweed【O】

*原本(尋木)優平(いであ(株)), 東悠斗(いであ(株)), 松田浩輝(いであ(株)), 山口賢一(いであ(株)), 阿部紘平(農林水産省), 三田康祐(農林水産省)
*Yuhei Tazunoki HARAMOTO(IDEA Consultants, Inc.), Yuto HIGASHI(IDEA Consultants, Inc.), Hiroki MATSUDA(IDEA Consultants, Inc.), Kenichi YAMAGUCHI(IDEA Consultants, Inc.), Kohei ABE(MAFF), Kosuke MITA(MAFF)

 ナガエツルノゲイトウは農業用水路等で大繁茂して水路を閉塞する等、通水阻害を引き起こす。また、水路の改修工事で発生する本種の茎や根が混入した泥土の処分・再利用において、本種の除去が課題であった。これまで遮光処理の方法が試されたが、約2年の処理期間を要するため、広大な仮置き用地の長期的な確保や運搬等のコストの問題から処理が不十分なまま再利用される場合があった。それにより、非意図的な分布拡大のリスクがある。一方、本種は生態学的な知見が乏しく、効果的な駆除に資する情報も少ない。そこで、泥土中の本種をより短期間で不活性化させる現場適用可能な手法の検証を目的に駆除試験を、枯死に必要な積算温度や寄与する条件の推定を目的に熱耐性試験を実施した。
 駆除試験では、施設園芸等における土壌消毒手法として用いられる陽熱処理も参考とし、3種類(遮光、土壌還元、陽熱処理)の処理手法を小規模(約17L)で試行した。萌芽抑制効果が最も高く、費用が小さい陽熱処理が効果的と評価された。次に、現場での施工を想定した規模(約36㎥、高さが約1.5m)の盛土に陽熱処理手法を適用した結果、夏季1ヶ月間の処理で本種は不活性化した。
 熱耐性試験では、部位(茎、地下茎、根)、熱条件(温度、処理期間)や環境条件(湿度、泥の有無)等の組合せにより計540条件で試験を行い、枯死には少なくとも13,440 (度*時間)の積算温度が必要であった。また、盛土の内部を再現した高湿度の泥を加えた試料では、枯死する積算温度が少ない点、還元状態特有の臭気を確認した点から、高湿度の盛土を作ることで内部の還元化が進み、本種の枯死に寄与すると考えられた。
 以上より、本種が混入した泥土の処理手法として、陽熱処理が最も現地適用性に優れていることや本種の熱耐性に関する知見が得られた。今後は、国内の他地域における適用を想定し、外気の積算温度等を指標とした判断基準の整理を検討する。


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