| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-163 (Poster presentation)
北米原産のマメ科落葉高木であるハリエンジュは河川生態系や河川管理に大きな影響を与えており、本種の抑制は河川の植生管理における課題となっている。そこで本研究では、北海道南西部・堀株川においてハリエンジュの優占する高木林や低木林のほか、河川改修工事後に新生した造成地に試験地を設定し、伐採等による抑制手法を検討するための実証試験を実施した。低木林については分布状況により群生地と散生地の2箇所の試験地を設けた。
高木林の試験地では樹幹の高さ1m以下の樹皮を地際まではぎとる「環状剥皮」、地際で樹幹を伐採する「地際伐採」、従来手法である「伐木除根」、低木林の試験地では地際で伐採した後に発生した萌芽を刈りとる「伐採および萌芽刈りとり」と「伐採のみ」を実施した。また造成地の試験地では実生や根萌芽を地際で刈りとる「早期刈りとり」を実施し、対照区として「刈りとりなし」の試験区を設けた。なお、先行研究にもとづき、高い抑制効果が期待される夏季に試験を開始した。
試験後およそ2年までの調査の結果、高木林における「環状剥皮」や「地際伐採」がハリエンジュを低被度に抑制すること、「伐木除根」が埋土種子や残存した根からの萌芽により再繁茂することが示された。低木林(群生地)における「伐採および萌芽刈りとり」がハリエンジュを低被度に抑制するほか、低木林(散生地)では「伐採のみ」でも萌芽発生を抑制することが示された。また造成地における「早期刈りとり」はハリエンジュを低被度に抑制するが、「刈りとりなし」では再繁茂することが示された。地下部を除去する「伐木除根」は裸地が新生するため、陽樹であるハリエンジュの再繁茂が促進されたと考えられる。一方、低被度(概ね10%未満)に抑制された試験区では、ササ類や多年生草本の被圧により萌芽発生は抑制されたと推察され、草本植生の維持管理によりハリエンジュの繁茂を抑制できる可能性がある。