| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-165 (Poster presentation)
コイ科タナゴ亜科に属するタナゴ類は,産卵基質として淡水性二枚貝類の鰓内を利用するという,特異的な繁殖生態を有する純淡水魚類である。タナゴ類は,河川の中流および下流域,ため池,水路などの平野部に生息し,日本国内では在来の19種・亜種と,国外外来の3種・亜種を合わせた計21種・亜種が確認されている.タナゴ類は,繁殖期に雄個体が多様な婚姻色を発することから,観賞用や釣りの対象として人気があり,ペットショップやインターネット上などで売買されている.しかし,近年,愛好家による自然分布域外への移植が問題視されている.愛好家による意図的な移植が起源と推察される外来種のタナゴ類が日本全国各地で確認されており,同種内あるいは異種間における交雑による遺伝的攪乱や,産卵基質および餌資源の競合などが,在来種と外来種の間で生じることで,在来種のタナゴ類に悪影響を及ぼしている.
Rhodeus albomarginatus は,中華人民共和国安徽省に自然分布するバラタナゴ属の1種である.2024年9月に,兵庫県内に位置する2箇所のため池においてバラタナゴ属のタナゴ類が採集され,演者らが外部形態および遺伝的特徴に基づいて標本を詳細に検討した結果,R. albomarginatus に同定された.本種は,日本において観賞魚として販売が確認されているが,野外における生息および繁殖はこれまで報告されていなかった.また,1箇所のため池では,本種の繁殖行動と二枚貝類への産卵および後期仔魚を確認し,兵庫県内のため池では既に本種が再生産していることが明らかになった.本種が日本の生態系に及ぼす影響は未知数であり,本生息地では予防原則の観点から防除が必要であるとともに,これ以上の分布域の拡大は防がなければならない.