| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-168 (Poster presentation)
近年、川や池などで外来ヌマエビNeocaridina sp.が多く見られるが、実際に外来ヌマエビを駆除することで在来種にどのような影響があるか調査した研究はほとんどない。そこで本研究では閉鎖水域であるビオトープにおいて外来ヌマエビの駆除を行うことで在来種であるヌカエビParatya improvisaにどのような影響があるか調査を行った。
調査は新潟市水族館の外来ヌマエビとヌカエビが混在しているビオトープを用いた。調査・駆除はビオトープ(総面積175.3㎡)を5地点にわけて行った。期間は6~11月、頻度は概ね2週間に1回、1地点当たり7分間、タモ網を用い採集を行った(計10回)。採集した外来ヌマエビは冷凍し、後日、体長と個体数を測定・計数した。ヌカエビは計測・計数後元の地点に放流した。
計10回の調査を通してヌカエビを8378個体、外来ヌマエビを14273個体採集した。6月上旬に行った初調査ではそれぞれ全地点の総個体数割合はヌカエビが12%、外来ヌマエビが88%であったが、10回目の最終調査では両種共に50%ずつとなり、ヌカエビの割合増加が見られた。 また、全地点の総個体数で見ると初調査でヌカエビが171個体、最終調査では1231個体と7.2倍に増加し、外来ヌマエビは初調査が1271個体、10回目では1228個体と駆除による大きな減少は見られなかった。両種の総個体数は9~10月にかけてピークを迎え、その後緩やかに減少した。
最終的にヌカエビの個体数は増加し、外来ヌマエビの個体数は一定程度維持された。夏の繁殖期には、新規個体の参入による急増を抑止することはできなかったが、繁殖期以外であれば駆除によって外来ヌマエビの増加を一定程度抑えることができた。また、駆除により相対的にヌカエビの個体数が増加する可能性があることが、今回の調査結果から示唆された。