| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-171  (Poster presentation)

新潟大学佐渡演習林における野外実習の心理的効果【O】
Psychological Effects on Students by Environmental Practical Course Carried out at University Forest of Niigata University in Sado Island.【O】

*蕪木史弦(新潟大学), 松倉君予(日本大学), 古郡憲洋(新潟大学), 崎尾均(新潟大学), 本間航介(新潟大学), 梶本卓也(新潟大学), 阿部晴恵(新潟大学)
*Shigen KABURAGI(Niigata Univ.), Kimiyo MATSUKURA(Nihon Univ.), Norihiro FURUKORI(Niigata Univ.), Hitoshi SAKIO(Niigata Univ.), Kosuke HOMMA(Niigata Univ.), Takuya KAJIMOTO(Niigata Univ.), Harue ABE(Niigata Univ.)

近年、自然環境に対する理解を深めるための教育活動として、森林内における体験を通じた学習への関心が高まっている。森林教育の実践例のひとつに、大学における学生野外実習があり、その中には大学附属の演習林を実習場所とするものが多く存在する。新潟大学佐渡自然共生科学センター演習林は、2012年に文部科学省教育関係共同利用拠点として認定を受け、学内外の機関を対象とした多様な教育活動を実施している。当演習林では、2019年より実習参加者に対するアンケート調査を実施しており、野外実習がもたらす心理的効果を定量化する取組みがなされてきた。本研究では、2019、2023、2024年度に実施されたアンケート調査結果について比較・解析し、野外実習活動がもたらす心理的効果について年度単位での検証を試みた。調査では、実習参加者に対し、自然への関心や知識、五感を用いた体験に関する設問を含むアンケートを実習前後の2回実施し、計27件の実習において747件の有効回答を得た。まず、事前アンケートの結果を実習間で比較したところ、森林への興味を問うものなど一部の設問において、有意な差が確認された。よって、実習参加者の事前意識は実習ごとに異なることが示された。また、事前―事後の回答差を符号順位和検定により分析し、回答差が有意だった結果に対しては効果量(Cohen’s d)を算出・評価した。その結果、実習参加者は野外活動により、嗅覚や聴覚を通じて森林の特徴を捉える力が向上するという効果が、年度を問わず一貫して認められた。さらに、事前アンケートの回答平均値と事前―事後の回答差との関係性を分析したところ、一部の実習において有意な負の相関が確認された。これは、事前意識が低い参加者ほど高い心理的効果を得られる可能性を示唆している。今後はこれらの結果を踏まえ、参加者の特性や学習テーマに応じた実習内容の改善を図り、より効果的な教育プログラムの開発を進めていく予定である。


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