| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-172 (Poster presentation)
近年、小学校の「図画工作」、中学校の「美術」で行われている鑑賞教育の重要性が増している。さらに、鑑賞教育は他教科との関連性が深く、国語、理科、道徳、環境教育などを内包した総合教育としてさまざまな可能性を秘めている。本研究の目的は、小中学校での環境教育の新たな場として「図画工作」「美術」での鑑賞を活用することである。
現在の環境教育は「最も環境教育が必要な子どもたちに効果的な環境教育ができない」という問題を抱えている。都市部で生活する子どもたちの日常生活は自然体験と剥離し、「田舎の祖父母の家に行く」という非日常的な自然体験すら、都市部へ流出した団塊世代が祖父母の世代になることによって減ってきている。さらに今の子どもたちは「デジタルネイティブ」であり、スマホなどの電子機器によって自然体験をした「つもり」になっている。環境教育を取り入れた鑑賞教育は、このような子どもたちに対して新しい形の環境教育を展開する一つの方法となる。
一方で、現在実施されている鑑賞を総合教育として展開する際の大きな問題が、鑑賞の対象の問題である。現在行われている鑑賞の多くは、教科書に載っている著名な芸術家の作品を観たり、作品制作の振り返りとして生徒同士でお互いの作品を批評したりという形が多い。これだと学習指導要領にある「(諸外国の)親しみのある美術作品」という鑑賞の対象としてはそぐわない。
そこで、本研究では、総合地球環境学研究所が所有している「国連子ども環境ポスター」の応募作品を用いて、さまざまな教育の現場で使えるような鑑賞プログラムを開発・実践してきた。本発表では今まで行ってきた、教員免許状更新講習でのワークショップ、博物館学芸員資格取得科目「博物館教育論」での教育プログラム開発および展覧会の開催、親子対象のワークショップ、中学校「美術」での鑑賞授業などの実践について報告する。