| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-174  (Poster presentation)

トドマツ人工林伐採地の広葉樹保持木における樹木のマイクロハビタット【O】
Tree-related microhabitats of broadleaved trees retained in harvested Todo fir plantations【O】

*山中聡(森林総研北海道支所), 雲野明(道総研林業試験場), 山浦悠一(森林総研四国支所)
*Satoshi YAMANAKA(FFPRI Hokkaido), Akira UNNO(Forestry Res. Inst. HRO), Yuichi YAMAURA(FFPRI Shikoku)

樹木が形成する野生生物の生息環境や餌資源となる様々な構造を樹木のマイクロハビタット(tree-related microhabitat)と呼ぶ。樹木のマイクロハビタットは、多様な生物に隠れ家や繁殖場所、冬眠場所、餌場を提供し、森林の生物多様性を左右しうる。このため、マイクロハビタットの調査を通じて生物多様性保全機能の高い樹種や個体の特徴を把握できれば、森林の伐採時に一部の樹木を残す保持林業などを効果的に実施するための有用な情報となりえる。北海道空知地方では、保持林業の実証実験を行い、広葉樹が伐採地に保持されている。本発表では、これら広葉樹を対象としてマイクロハビタットを調査した結果を報告する。
調査は2022年から2024年にかけて広葉樹13種を対象に行った。2024年は二人の観察者が別日に同じ調査木を訪問しマイクロハビタットの有無を観察することで、マイクロハビタットの発見率が異なるのかについても併せて検証した。のべ920本の広葉樹を調査した結果、最も多く観察されたマイクロハビタットは「樹皮の消失」であり、次いで「昆虫の穿孔と脱出口」や「枯死枝」が多く観察された。木一本あたりのマイクロハビタットの種類数と樹種と胸高直径、立地条件(傾斜と標高)の関係を検証したところ、マイクロハビタットの種類数と胸高直径とに正の相関があった一方で、傾斜と標高の影響は小さかった。樹種の違いはマイクロハビタットの種類数に大きく影響しており、オニグルミやオヒョウ、キハダなどが多くのマイクロハビタットを持つ傾向があった。出現数が多かったマイクロハビタットを対象に発見率の推定を行った結果、マイクロハビタットによって発見率に違いがあり、この違いはマイクロハビタットが発生する場所や観察・判断のしやすさなどと関連することが示唆された。


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