| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-175  (Poster presentation)

耕作放棄地はどう生まれるか?:機械学習を用いた市区町村別発生要因の推定【O】
How does abandoned farmland arise? Estimation of the determinants at a municipality scale by using machine learning【O】

*饗庭正寛, 小川みふゆ, 吉田丈人(東京大学)
*Masahiro AIBA, Mifuyu OGAWA, Takehito YOSHIDA(The University of Tokyo)

耕作放棄地の増加は農業生産、生物多様性、生態系サービス等に影響する重要な問題である。その発生リスクを予測し適切な対策を講じることを目的として、多くの先行研究が耕作放棄地発生要因の特定に取り組んできた。しかし、そうした研究の多くで解析対象とされてきた耕作放棄地の面積は、経営農地の耕作放棄だけでなく、遷移の進行や用途の転換による耕作放棄地の減少(潰廃)の影響も受けるため、耕作放棄地発生要因の解析には適していない可能性が指摘されている。そこで本研究では、2010年および2015年の農林業センサスのデータを用いて、東日本大震災の影響が大きい三県を除く1595の市区町村を対象に、経営農地の新規耕作放棄率を推定し、その決定要因を機械学習により推定した。説明変数として14の社会経済的変数、13の立地・土地利用に関する変数、4つの気候変数に2つの空間変数を追加した計33の変数を用いた。一戸あたり経営耕作地面積(新規耕作放棄率を下げる負の影響)の重要度が最も高く、農業従事者平均年齢(正)、借入農地率(負)、農地平均斜度(正)、水田率(負)、畑率(正)、受託面積率(負)、半径10km周辺人口(正)がそれに続いた。また、1595の市区町村について、それぞれ全33変数の影響の方向と大きさを算出し可視化した。その結果に基づき自治体のクラスタリングを行ったところ、主要な説明変数から受ける影響が大きく異なり、結果として新規耕作放棄率も異なる6つのクラスター(新規耕作放棄率の低い方から北海道型、南日本型、平野部稲作地帯型、中山間零細稲作地域型、大都市周辺型、急傾斜山村・離島型)に分類された。新規耕作放棄率を対象とした初の網羅的解析である本研究の成果は、耕作放棄地の発生の予測や原因の特定をとおして効果的な施策の設計に資すると期待される。


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