| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-176 (Poster presentation)
耕作放棄地が生物多様性と生態系サービスに与える正負両面の影響について、世界中で議論が続けられている。日本では、水田の耕作放棄が生物多様性に与える影響について、多くの研究が行われてきた。しかしながら、農林業センサスによると、日本の農地面積の内訳は水田が54%であり、残りの46%は畑、果樹園および牧草地である。耕作放棄がいずれの農地でも起こりうるとすると、水田だけでなく、畑、果樹園および牧草地においても耕作放棄の影響を評価することが重要である。そこで本研究では、日本のさまざまな農地における耕作放棄地での生物多様性と生態系サービスに関する研究について、キーワードを設定して文献を抽出し、システマティック・レビューを行なった。抽出された論文について、放棄された農地のタイプごとに、どの地域でどの生物分類群が何を指標として評価され、どんな生態系サービス(ディスサービスを含む)に関係していたかを解析した。これまでの研究の多くは水田の耕作放棄を対象としており、果樹園や畑地の耕作放棄の研究は少なかった。調査された生物分類群では、植物が最も多く次いで昆虫だった。種数や個体数を調査している研究は比較的多かったが、生態系の変化を知る上で重要な指標の1つであるバイオマスを測定している研究は少なかった。生態系サービスの中では、生息地サービスについての言及が最も多かった。果樹園の耕作放棄に関しては、獣害問題として取り上げられていることが多かった。先行研究をまとめてみると、果樹園や畑地の耕作放棄による生物多様性への影響評価や、生態系サービスに与える耕作放棄の直接的な影響評価が不足していた。