| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-178  (Poster presentation)

群れの違いを考慮したニホンザル加害群の泊り場選択の解明【A】【O】
Sleeping site selection of Japanese Macaque addiction troops considering troop Differences【A】【O】

*三谷友翼(岩手大学院連合農学科), 千本木洋介(BOULDER(株)), 江成広斗(山形大学)
*Yusuke MITANI(Iwate univ.), Yosuke SENBONGI(BOULDER Co., Ltd), Hiroto ENARI(Yamagata Univ.)

 近年、生息地利用に大きな種内変異が認められる例が多くなる中で、“個体の個性(状況に依存しない行動の個体差)”との関係が活発に議論されている。一方で、“群れの個性(状況に依存しない行動の群れ差)”の存在や、“群れの個性”と生息地利用の関係はほとんど注目されてこなかった。本研究では、「昼行性動物の日中の生息地利用には一貫した群れ差(群れの個性)がみられ、群れの個性に応じて食物獲得とリスク回避のトレードオフは異なるため、夜間の泊り場選択にも違いが生じる」という仮説を設定し、ニホンザル加害群の泊り場の特徴を検討することで検証した。2020年~2023年に福島県南会津町において、農作物への依存度が異なる農作物加害群9群にGPS発信機を装着し、主な活動時間帯である日中の群れの位置と、0時(泊り場)の位置を記録した。まず、日中の人里までの距離において季節間で一貫した群れ差があるか検討し、群れの個性の存在を定量的に評価した。次に、一般化線形混合モデル(GLMM)を用いて、泊り場周辺の植生、地形の特徴を群れの個性を考慮したうえで評価した。日中に群れが位置した場所から人里までの距離には、ほとんどの季節間で有意な相関が認められ、人里への依存度には群れレベルの個性があると考えられた。GLMMの結果、特定の季節において、人里への依存度の高い群れほど、農地付近を泊り場とする傾向が強くみられた。こうした傾向から、農地への依存度が高い群れは、農地に近い特定の泊り場を繰り返し利用しているものと考えられた。こうした行動特性は、人から発見されるリスクを高めるが、高品質な食物を効率的に獲得できるといった高い利益も生じる。このことから、群れ動物の生息地利用の研究において、群れ差を考慮することの重要性が示唆された。


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