| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-183  (Poster presentation)

河川形態の復元が河川環境及び 水生昆虫相に与える影響【A】【O】
The effects of river restoration on the environment and aquatic insects【A】【O】

*永柳圭都(北海道大学), 宇野裕美(東北大学), 森本淳子(北海道大学), 中村太士(北海道大学), 根岸淳二郎(北海道大学)
*Keito NAGAYANAGI(Hokkaido Univ.), Hiromi UNO(Tohoku Univ.), Junko MORIMOTO(Hokkaido Univ.), Futoshi NAKAMURA(Hokkaido Univ.), Junjiro NEGISHI(Hokkaido Univ.)

近現代、世界では土地の利用改変の為河川の流路を変更及び直線化した。しかし、この改変は河川環境の劣化及びそれに伴う水生生物の個体数の減少に繋がった。そのため、水生生物に配慮した河川管理が近年行われている。本研究の調査地であるブトカマベツ川も、林道建設のため約50年前に流路を変更し、氾濫原の劣化及び水生生物の減少に繋がった。この事から、2022年夏に現在の流路を維持した上で以前流路があった分流に水を再度流入させる再生事業が行われた。この事業の目的は、河川環境及び生物相を自然な状態に戻すことである。そこで本研究では、ブトカマベツ川における河川形態の復元が河川環境及び水生昆虫相に与える影響を解明した。
本研究は再生事業の影響を受ける再生区と、再生事業の影響を受けず再生事業後の目標となる自然河川の対照区を同河川内に設けた。各区間には本流と分流があり、それぞれ本流と分流に3つ調査区間を設定した。 それぞれの区間で、再生事業の実施前である2022年6月と、実施後である2023年6月及び2024年6月に水生昆虫の採集および河川環境のデータを収集した。そして、再生事業の実施前と実施後の河川環境及び水生昆虫相を比較することで、再生事業の影響を明らかにした。
結果として、再生区の分流では、河川環境及び水生昆虫相ともに再生事業の影響は見られなかった。この理由として、再生区の分流に流入する流量の不足が原因であると考えられる。また、対照区では年によって本流と分流の流量の割合が変動していたが、再生区では本流と分流の流量の割合の変動は見られなかった。
今回の調査期間では、再生区において再生事業の影響が見られなかった。しかし、流路を復元したことで、再生区においても今後対照区のような本流と分流の流量の割合が変動するような動態を示すことが予測される。このような動態を維持できる河川管理が、今後再生区がより自然な状態を維持する上で重要となる。


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