| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-187  (Poster presentation)

北海道内の博物館における小型哺乳類コレクションの収集傾向に関する研究【A】【O】
Temporal trends of small mammal specimens collected by museums in Hokkaido.【A】【O】

*鈴木あすみ(北海道博物館, 帯広畜産大学大学院)
*Asumi SUZUKI(Hokkaido museum, Obihiro Univ.)

研究に利用可能な状態で博物館資料を収集・保存管理することは、博物館の最も基本的な機能である。自然史標本が持つ形態・遺伝情報や背景情報は様々な調査研究に用いられ、また将来の利用が期待されている。このほかにも、展示や教育普及などの博物館スタッフによる博物館活動を通して、一般市民によっても標本は利用される。このような利用は人々が生態系への理解を深める手段のひとつであり、博物館のコレクションは社会の維持発展に寄与してきたといえる。本州以南とは異なる生態系を有する北海道では、地域に分布する種の標本を地域内に保存し閲覧可能な状態にすることの社会的意義は高いが、面積の広大さも相まって実現は容易ではない。
陸生哺乳類は人間にとって身近な分類群であるが、博物館での収集には困難が伴う。その理由として、法律による捕獲の規制や、捕獲に技術を要することが挙げられ、特に大型種の場合はスペースや予算が負担になっている。その他の収集方法としては既存標本の寄贈、拾得遺体等の斃死体の搬入がある。前者は狩猟対象種以外の収集がほとんどないが、後者は標本作製の金銭・人的コストをクリアできれば様々な種の収集が可能な手段である。
道内の博物館では少ない学芸員配置数のため、要求に応じて幅広いジャンルの資料を取り扱うが、特別な知見や技能を要する収集活動には困難が伴う。現状では、ネズミ類などの小型哺乳類は優先して収集されることは稀であり、総じて収蔵数が少ないと考えられる。一方で、これらは標本製作コストが低いことから、標本作製方法の普及によって収集状況が改善する可能性を秘めている。本研究では、道内の博物館が所蔵する小型哺乳類標本について、コレクションの概要と収集状況についての聞き取り調査および標本の調査を行い、現状と課題についての情報収集を試みた。これによって得られた情報をもとに、収集を推進していくための取り組みを博物館スタッフに向けて行ったため、これについて報告する。


日本生態学会