| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-201 (Poster presentation)
クマネズミ・ドブネズミ・ハツカネズミは家畜・人獣共通感染症の媒介において重要なレゼルボア/ベクターであるため、特に畜産現場ではネズミ対策を実施するよう家畜飼養衛生管理基準で義務付けられている。上記ネズミの対策には主として殺鼠剤が使用されているが、抵抗性獲得個体の出現や非対称種への二次被害等の問題から、欧米を中心に殺鼠剤依存的な対策から生態的特性を利用した管理(Ecologically-based Rodent Management: EBRM)への転換の重要性が広まりつつある。しかし、畜産現場における上記ネズミに関する研究は少なく、まずは生態に関する基礎的知見を収集する必要がある。
そこで本研究では、上記ネズミが畜産現場内のどこに・いつ・どのくらい出没し、何をしているか、を明らかにするために、肉用牛飼養農場にて1年間のカメラトラップ調査を実施した。調査農場には、ネズミ類ではクマネズミ・ハツカネズミが、食肉目ではイエネコ・タヌキ・イタチが撮影された。ネズミ類のうちクマネズミおよびハツカネズミの撮影頻度は季節およびカメラ設置場所によって異なっており、場所によって行動の表出頻度にも違いが見られた。上記結果より、畜産現場に出没するクマネズミおよびハツカネズミは年間を通じて畜産現場内に出没するものの利用場所は季節によって異なると考えられた。また、食肉目は年間を通じて撮影され、ネズミの利用場所を探索する行動が見られたが、ネズミと食肉目の日周活動パターンは重複していたことから、畜舎におけるネズミの活動に食肉目の影響は小さいことが示唆された。