| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-204  (Poster presentation)

将来の気候変動と社会経済シナリオの下での土地利用を反映した植物の分布予想【O】
Projecting future distribution of plant species reflecting climate change and a land use under a socio economic scenario【O】

*丹野夕輝(国立環境研究所), 黄エンケイ(東京大学), 橋本禅(東京大学), 石濱史子(国立環境研究所)
*Yuki TANNO(NIES), Wanhui HUANG(Univ. Tokyo), Shizuka HASHIMOTO(Univ. Tokyo), Fumiko ISHIHAMA(NIES)

気候変動と土地利用の変化はどちらも種の分布や多様性に影響しうる。このため、適切な保全策の立案を目的として将来の種分布予測を行う場合には、この両方を考慮する必要がある。本研究では、日本全国を対象に、維管束植物の種分布モデルの構築と、将来の気候変動と社会経済シナリオの下での分布予測を試みた。
種分布モデルには、環境省の自然環境保全基礎調査第6-7回植生調査で実施されたコドラート調査のデータを使用した。それぞれの種の在/不在を3次メッシュごとに集計して応答変数とした。説明変数は、気候値(最寒月の最低気温、夏の降水量、冬の降水量)、土地利用(住宅地、水田、畑地・果樹園、休耕地、草地、植林、その他)、土壌タイプ、TWI、解放水面の面積とした。GLM、GAM、ニューラルネットワークおよび勾配ブースティングを用いて種分布モデルを構築した。これらのアルゴリズムの中から、AUCが高かったモデルを選んで以降の解析に使用した。構築した種分布モデルに、全球気候モデルから予測された気候値と、TerrSet Land change modeler で予測した土地利用を代入することで、2050年の種分布を予測した。予測は、SSP1-RCP2.6とSSP2-RCP4.5のシナリオでそれぞれ実施した。アルゴリズム間で予測値がばらつくため、各アルゴリズムからの予測値の平均値を計算した。
予測の結果、どちらのシナリオでも分布が拡大傾向の種よりも縮小傾向の種が多いことが示唆された。特にSSP2-RCP4.5のシナリオではこの傾向がやや強かった。どちらのシナリオでも分布が縮小傾向になると予測された種には、ハルニレのような北方の種が含まれていた。これらの予測結果をもとに、維管束植物の保全策について議論する。


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