| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-208 (Poster presentation)
モニタリングサイト1000事業のとりまとめ等で里地里山の普通種が減少傾向にある可能性が指摘される一方で、地方の人口減少・無居住化やそれに伴う耕作放棄が顕著になりつつあり、生物多様性へのさらなる悪影響が懸念されている。効果的な保全策のためには、無居住化・耕作放棄の生物多様性へのリスクが大きい地域に関する空間明示的・定量的な知見が求められる。無居住化・耕作放棄が起きたことで生物多様性に影響が生じることを示す研究例は蓄積されつつあるものの、リスク評価の観点からは、地域ごとの無居住化・耕作放棄の起きやすさやその期間も考慮する必要がある。また、それらの要素は人口分布の将来の推移によって変化するはずだが、人口の将来シナリオの違いが里地里山の生物多様性に及ぼす影響に関する知見は限られている。
演者らはSugimoto et al. (Proc. Royal Soc. B 2022) によって公開されている廃村集落における調査データと、国立環境研究所による福島の避難指示区域周辺の衝突板トラップによる調査データを統合し、無居住化年数と無居住化時期に近い土地利用図に基づく田及びその他農用地面積からチョウ類の相対密度を予測する階層ベイズモデルを構築した。さらに有賀・松橋(都市計画論文集 2012)による複数の人口シナリオ及びそれに基づく土地利用シナリオ(Ohashi et al., Transactions in GIS 2019)等の将来推計を用いて2050年のチョウ類の相対密度について三次メッシュレベルで推定することで、人口動態が将来的に里地里山の普通種チョウ類群集の多様性に及ぼしうる影響について論じる。