| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-212 (Poster presentation)
森林における毎木調査は、現場での調査とともに、レーザー計測やドローンによる空中写真測量が主流化した。これにより広い範囲の森林生態系全体における樹木種類・本数や材積量が積み上げで推定できるようになった。しかし、上空からの計測は地表面までの情報が、林内からの計測では高木層までの情報の取得が困難で、上下で個体の情報が食い違うことがしばしばある。しかし、地上の比較的詳細なデータを使って、広域で容易に測定できる上空データが補間できれば、バイオマス量などの推定をより広域で推定可能である。本研究では、福島県三島町におけるスギ人工林を対象にして、上空および林内での計測データを使って、両者のデータマッチングを試みた。上空から得た森林点群データを、演者らの既報の通り、Rの森林点群解析パッケージ(LidR)を用い、独自スクリプトによって地表面の推定、樹冠の分布、樹頂点・樹高の推定を行った。このデータを元に、樹冠の境界を地上計測した森林点群を切り出した。切り出したデータは手動で、個体ごとの点群に分類し、さらに樹幹とそれ以外に分類した。演者らの別の既報の通り、点群の機械学習を行うPointNet++によって、手動分類データを教師データとして、樹幹分類器を生成した。PointNet++のプラットフォームとしてはMATLABを使用した。この分類器によって、手動分類していない範囲の森林点群に対しても、自動で樹幹抽出ができる。以上のスキームから例えば胸高直径を、地上計測した範囲で推定できる。本講演では、これらの上空と地上のスキームを半自動化して適用し、樹高や胸高直径を使った現存量の推定だけでなく、個体自動識別を通じて成長量を推定した結果を示す。機械学習による分類は、精度や安定性にまだ問題があるが、将来的にはこれら技術とデータが、モニタリングや林内作業の自動化による低コスト化、省力化をもたらすものと期待できる。