| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-213  (Poster presentation)

圃場整備がもたらす農地生態系の変化【O】
Changes in Agricultural Ecosystems Induced by Land Consolidation【O】

*Akira NODA, Takeshi OSAWA(Tokyo Metropolitan Univ)

 圃場整備は農地の食糧生産を向上させた一方で、生物多様性を低下させ、生態系機能の変化を引き起こした。特に水田は乾田化によって湛水時と乾燥状態という2側面を持つようになった。このことは、乾田化された水田は、常に湿潤環境が維持される湿田とは異なる生態系機能を有する可能性を示唆する。しかし、農地の生態系機能に関する研究は多くが湛水された水田に注目されており、その実態は不明な点が多い。
 本研究では、圃場整備の有無による水田と畑における植物群集の機能形質組成の違いから、圃場整備が農地の生態系機能に与える影響を検討した。2023年に圃場整備が行われていない里山景観で水田(里山水田)と畑(里山畑)を、2024年には圃場整備が行われた景観で水田(整備水田)と畑(整備畑)で全維管束植物を記録した。生活型、寿命、開花時期、開花期間、草丈、花の色、花粉媒介様式の7つの植物形質を図鑑から抽出し、カテゴリーに分類して解析を行った。調査地点間の機能形質組成の類似度を把握するため、NMDSによる序列化と地点ごとの機能形質数の比較を行った。類似度の計算には、形質カテゴリーごとの種数と出現頻度に基づく重み付けを行った。
 その結果、出現種数に統計的な差異は見られなかったものの、整備水田の機能形質組成は里山水田よりもむしろ里山畑に類似することが示された。整備水田では、里山水田と比べて半地中型植物、多年生植物、夏に開花する植物が少なかった。以上の結果から、水田という同一の土地利用であっても、圃場整備の有無により生態系機能が異なることが示唆された。現在、農地の生態系サービスへの関心が高まりつつあるが、圃場整備履歴の影響を考慮した管理計画が必要である。


日本生態学会