| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-214 (Poster presentation)
世界的に都市化が進む現在、都市環境に対する生物の応答の解明は重要な課題である。しかし、都市化に対する植物の形質応答の理解は未だ限定的である。既往研究は欧州および北米のような比較的粗放的な都市に集中しているため、アジアで見られるような人口密集都市での研究は乏しい。さらに、これまでの研究は単一の植物種を扱った研究が多く、どの程度既存の研究結果が一般化できるかは不明である。そこで、本研究では世界有数の大都市である東京を対象に、複数の草本植物種の形質と都市化傾度の関係を明らかにした。
調査は都市化の傾度が異なる都市公園(1ha以上)で行った。各公園で8種の植物(シロツメクサ、オオバコ、イヌタデ、エノコログサ、メヒシバ、キツネノマゴ、カタバミ、アカツメクサ)を各種で最大10個体を採取した。形質は各個体の草丈とSLAを測定した。SLAについては各個体から最大4枚の葉を選び、平均値を計算した。解析は一般化線形モデルにより行い、各形質を応答変数とし、植生指数を説明変数とした。
一般的に植物のSLAや草丈は都市部ほど大きくなるが、本研究では逆の結果が見られた。具体的には、都市化した地域において、シロツメクサ、オオバコ、イヌタデはSLAが小さく、オオバコ、イヌタデ、メヒシバ、キツネノマゴは草丈が小さいことが分かった。都市部ほど大きくなる形質はエノコログサのSLAのみだった。この先行研究と対照的な結果は、東京の都市開発の形態や歴史が関係している可能性がある。既往研究では、都市部ほど人為活動を受けた期間が長いため、土壌が肥沃であることが多い。一方、東京は戦後に強度な開発の行われた都市であるため土壌は新しく、都市部の土壌は肥沃ではないと考えられる。本研究の結果は、都市化に対する生物の反応には、人為活動に起因する地域的な変異があることを示唆している。