| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-215 (Poster presentation)
道路は現代社会における最も重要な社会資本のひとつである。しかし、道路の舗装は脊椎・無脊椎動物を問わず、さまざまな野生生物に悪影響をもたらす。例えば、現在主流の道路舗装材であるアスファルトは、未舗装道路では起こり得ない物理特性(路面温度や保水率など)に起因して、無脊椎動物類を誘引または忌避する。アスファルト路面に誘引される場合はロードキル増加の懸念があり、忌避する場合は,特に飛翔能力の無い無脊椎動物にとって生息域分断の影響を強く受ける可能性がある。しかし、アスファルト以外の舗装材が無脊椎動物におよぼす生態影響については、未だ明らかにされていない。そこで、アスファルト舗装以外の影響に対する知見が少ない無脊椎動物を対象に、異なる舗装材(アスファルト、コンクリート、ゴムチップ)に対する応答を野外操作実験により調査した。なお、各補装材の物理特性については、路面温度と保水率に着目した。調査は、近畿大学奈良キャンパス内の林縁の草地で行った。1 m2程度の各舗装路と土道を作成して設置した後、各補装材上でみられる無脊椎動物の出現数を目視にて記録した。調査時間は、無脊椎動物類が活発に活動する時間帯のうち、日の出2時間後、日の入り2時間前、南中、およびそれらの中間の時間帯の計5回とし、各回1時間にわたって調査した。それにくわえ、夜間調査として、日没後2時間後にも同様の調査を実施した。なお、夜間は舗装板の中央に粘着トラップを設置し、付着した生物を記録した。生物調査に並行して、調査時間中は15分ごとに各補装材の路面温度と保水率を計測した。調査の結果、飛翔能力を持つ種(ハエやカメムシなど)はゴムチップに誘引され、飛翔能力を持たない種(オサムシやクモなど)はゴムチップを忌避するなど、種間での明確な応答の差が確認された。本発表ではこれらの差がもたらされた原因について、各舗装材の物理特性の違いを交えて議論する。