| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-216 (Poster presentation)
温帯域の沿岸域では海藻藻場が衰退する磯焼けが生じており、日本国内では漁業者による海藻の移植や植食動物の駆除等により藻場の回復を目指す“磯焼け対策”が実施されている。このような磯焼け対策は日本全国で行われているが、各対策が海藻藻場に対してどのような効果をものか定量的に示した研究結果はほとんどない。本研究では2016年ー2018年の日本全国の藻場のモニタリングデータと漁業者による磯焼け対策の実施状況を組み合わせて、コンブ類、カジメ・アラメ類、ワカメ、ホンダワラ類、小型海藻を対象に農林水産省委託プロジェクト(JPJ008722)において全国9つの海域ブロックに分けて磯焼け対策の効果を統計的に検証した。その結果、北海道の日本海および太平洋のコンブ類の被度、東北太平洋、太平洋中部、日本海西部、四国太平洋、東シナ海でアラメ・カジメ類の被度、東シナ海でワカメの被度、瀬戸内海と東シナ海でホンダワラ類の被度、東北太平洋、日本海北部、四国太平洋、東シナ海で小型海藻の被度が磯焼け対策区で上昇していることがわかった。また、磯焼け対策の効果が海藻分類間や地域間で異なることが統計解析により推定され、海藻分類による生態の違いや地域間の海水温上昇および植食動物の影響の違いがその要因として考えられた。