| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-218 (Poster presentation)
自然に基づく観光は様々な人為的及び自然的要因により、形作られている。特に、自然公園間の訪問の違いについての研究も自然に基づく観光の研究の1つの分野として重要であり、多く行われている。ただ、既存研究ではアンケートやクラウドソーシングデータを利用した1時点での研究がほとんどであり、自然公園の訪問者数の時間的変化やその要因に関する研究の多くは1つの国や公園で実施されている。そのため、複数の要因が訪問者の増減に影響を与えることは考察されているが、各自然公園における訪問者の時間的変化の違いやその違いの要因については不明瞭である。本研究では、各自然公園の訪問者数の時間的変化の傾向と地域特性を比較することで、自然公園間の訪問者数の時間的な変化の違いを生み出す要因を明らかにする。
本研究では、環境省が行っている「自然公園等利用者数調」の長期時系列を利用し、30年間における各自然公園への訪問者数の時間的変化を検証し、その変化と各自然公園の地域特性との関係を解析した。
検証の結果、各自然公園での訪問者数の時間的変化の傾向は25の公園が正の傾向、57の公園が負の傾向をとっており、日本全体では減少傾向であった。また、スキー・スケートでの利用がある公園ではそうでない公園と比べて訪問者数に減少傾向が認めらた。さらには、県外からの宿泊者数の時間的変化の増加傾向が大きい公園ほど訪問者数に増加傾向が認められた。
本研究の結果から、各自然公園の訪問者数の時間的変化は一貫していないことを示した。また、訪問者数が増加している公園では特に県外からの訪問者の増加が寄与しており、日本全体での自然公園への施策よりも、その公園でしかできないような施策を提案することが重要であることが示唆された。
今後の展望としては、訪問者の満足度や再訪意向についても分析することで、オーバーツーリズムの問題解決に寄与する要因を解明する予定である。