| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-220  (Poster presentation)

アブラムシによる作物被害は寄生性・捕食性天敵の導入のタイミングによって変わるか?【A】【O】
Does crop damage caused by aphids vary depending on the timing of introducing Parasitoids and Predatory natural enemies?【A】【O】

*土井具汰(近畿大院・農), 山元駿介(近畿大院・農), 長野光希(近畿大院・農), 石若直人(近畿大院・農), 平岩将良(近畿大学・農), 早坂大亮(近畿大学・農)
*Kutta DOI(Grad. Sch. Agr., Kindai Univ), Syunnsuke YAMAMOTO(Grad. Sch. Agr., Kindai Univ), Kouki NAGANO(Grad. Sch. Agr., Kindai Univ), Naoto ISHIWAKA(Grad. Sch. Agr., Kindai Univ), Masayoshi HIRAIWA(KINDAI Univ.), Daisuke HAYASAKA(KINDAI Univ.)

環境保全への高まりから、農業害虫の防除現場では、薬剤抵抗性が起こりにくい生物的防除(天敵による防除)に注目が集まりつつある。しかし、生物的防除は従来型の防除体系(化学的防除)と比べ、効果の即効性や持続性に課題があるとされる。そのため、現状の生物的防除法の高度化が望まれる。たとえば、天敵同士もしくは天敵‒害虫間の相互作用に着目した新たな防除手法の開発等が挙げられる。農作物の主要な害虫のひとつに吸汁性のアブラムシが挙げられ、生物的防除が実践されている。本種の防除に有効な天敵として、捕食型のナミテントウと寄生型のアブラバチが用いられている。現状、それぞれ単独での利用が主流となっており、併用には課題(アブラバチに寄生されたアブラムシ(寄生個体)をナミテントウが捕食することによる防除効果の低減)が多いとされる。しかし、両種を併用することで、ナミテントウはアブラバチを用いた防除効果の低減に原因である二次寄生蜂の影響を受けないため、一定の防除効果の維持が期待される。仮に、ナミテントウが寄生個体を捕食しない要因を明らかにできれば、両天敵を併用することで生じるアブラムシ防除効果の低減を回避できる可能性がある。そこで、初めにアブラバチに寄生されていないアブラムシ(健全個体)と寄生個体に対するナミテントウの捕食選択性を評価した。その結果、寄生7日目以降にみられる変色個体に対し、ナミテントウは有意に捕食を避けた。つまり、アブラバチを放飼後、アブラムシが変色するまで期間をあけたのちナミテントウを放飼する(時間差放飼)ことで、寄生個体が捕食されない生物的防除が可能となることが示唆された。次に、実環境を想定した試験区を用いて、両天敵生物の時間差放飼による併用効果を検証した。時間差放飼により、変色したアブラムシ個体の減少が抑制されるなど、単独利用と比較してより効果的な生物的防除の可能性が提示された。


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