| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-221 (Poster presentation)
近年、有効な温暖化防止策の一つとして、有機物を炭化させたバイオチャーの活用が注目されている。バイオチャーの作成には、用いる資材や炭化炉の種類などによってその利便性や炭化率が大きく異なることが予想される。本研究では、都市緑地の一つとして位置づけられる玉川学園キャンパス内で得られる様々な有機資材からバイオチャーを作出することで、各作業工程を整理するとともに、その炭化率からより効率的な炭化方法について議論した。
調査は東京都町田市玉川学園キャンパス(63 ha)で行った。敷地内には様々なタイプの小規模な緑地(敷地面積の55%)が点在し、その多くはコナラなどの旧薪炭林、その他にスギやヒノキの植林、モウソウチクなどの竹林、クスノキやサクラなどの植栽、さらには草地や農地などである。それらの利用や管理で得られる剪定枝や間伐材、農作物残渣などを収集し炭化する資材とした。炭化には主に2種の簡易式炭化炉(閉鎖型および開放型)を用いた。炭化前の資材と作出されたバイオチャーの乾燥重量の比率から収炭率を、それぞれの炭素重量から炭化率を算出し比較した。
その結果、炭化率は6~61%で大きく変動した。閉鎖型(6%~60%)の方が開放型(12%~30%)よりも高い傾向であった。また、母材別でみると木本資材のほうが草本資材よりも高く、また材の比重が高いものの方がより高い傾向であった。簡易式炭化炉では、同一の資材を用いてバイオチャーを作成してもその炭化率は30%近く変動する場合もあった。これらの炭化率は資材の燃え残りがあると過大に評価され、また燃焼して灰になると過小評価となり、これらの影響が含まれているものと考えられる。効率的な炭化方法は、母材の種類や炭化炉自体の性能だけでなく、資材の集めやすさなどの作業効率も踏まえたうえで、適材適所な選択が必要であると考えられた。