| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-223 (Poster presentation)
人為的影響による生物多様性の減少を止め、持続的な食料供給を実現するためには、持続可能な社会に向けた社会変革が必要である。近年のIPBESにおける議論では、消費パターンなどの自然劣化の間接要因や、「自然と人間の断絶」などの自然劣化の根本的原因に働きかける必要性が指摘されている。持続的な食料供給の観点では、環境配慮農法により生産された農産物を購入する消費パターンの促進や、「自然と人間の断絶」を解消し「自然とのつながり」を強めることが必要であると考えられる。しかし、食品・農産物の購買行動に関しては、先行研究において消費者の「自然とのつながり」との正の相関関係は示されているものの、①両者の因果関係や②影響のプロセス(直接か間接か)についてはほとんど明らかにされていない。そこで本研究では、生物多様性保全に配慮して生産された農産物の購買行動を対象に、①②の点を明らかにすることを目的とした。滋賀県守山市のファーマーズマーケット「おうみんち」において生物多様性保全型農業米を購入した消費者に対しアンケート調査を行った(n=243)。計画的行動理論に基づく「態度」「主観的規範」「行動統制感」「行動意図」と、測定尺度としてNature Relatedness Scale を用いた「自然とのつながり」を購買行動の説明変数とした。共分散構造分析の結果、「自然とのつながり」が「態度」「主観的規範」「行動統制感」を通じて「行動意図」に有意な正の影響を与えることが確認できた。他方で、「自然とのつながり」から「行動意図」への直接の影響は確認できなかった。ここから、「自然とのつながり」が複雑な心理的因果プロセスを経て行動意図に影響を与えることが明らかになった。「自然とのつながり」を強化し、生物多様性に配慮した農産物の消費パターンを促進することで、持続可能な食料供給に向けた社会変革を推進することが期待される。