| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-228 (Poster presentation)
動物の道路上での轢死(ロードキル)記録はその種の確実な存在を示すデータであり、生息状況を示すモニタリングデータである。このようなデータの活用は、鳥獣害対策や生物多様性地域戦略等、地方自治体における野生動物管理の実施に有用である。しかし、ロードキルデータは各自治体にて蓄積されてきたが、道路維持管理を主目的としてきたことが多く、モニタリングデータとしての有用性はほとんど示されていない。
そこで本発表では、茨城県つくば市における事例からデータの有用性を検証する。同市では年間600件以上のロードキルが市民から報告されており、市が高速道路以外の公道におけるロードキルデータを一元管理している。2017年4月から2024年3月に発生したロードキルのうち、タヌキ・アライグマ・ノウサギ・ハクビシン・イエネコの5種を解析対象とした。解析には、Poisson-catchability modelを応用したモデルを作成・使用した。モデルでは、観測データとして大字単位の土地利用(PCA)、道路周辺の土地利用(PCA)、ロードキル件数、空間自己相関、面積あたりの交通量を使用し、個体数、成長率、ロードキル件数、轢死率を推定した。また大字別に生息密度・轢かれやすさと土地利用の関係も解析した。
結果として特筆すべきは、タヌキ・アライグマ・ノウサギの3種であった。タヌキの個体数は7年間で8倍に増加していたが、最も高い年の生息密度が先行研究と同程度であり、調査期間に個体数が回復していたと思われる。アライグマの生息域・個体数は著しく拡大・増加していたが、ジェネラリストであるためか有意な土地利用は見られなかった。ノウサギの個体数は全国の減少傾向に反して、近年むしろ増加傾向にあり、人工建造物周辺の緑地で増加していたと考えられる。以上の各種の時空間動態をもとに、ロードキルデータの有効性と活用法について議論する。