| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-229 (Poster presentation)
救荒植物は、飢饉時に食料として利用された野生植物であり、食糧危機や環境変動に対応する資源として再評価されている。その植生調査は、植物種の識別、環境測定、データ記録等を含み、労力を要する。本研究では、この調査を効率化するモバイルアプリケーションMappEnvを開発した。MappEnvは、植生に関する専門知識を持つ主催者が観察会を開催できるアプリである。主催者は対象植物や調査範囲を設定し、参加者を募る。収集された写真、位置情報、種名などのデータは主催者が管理、再配布できる。参加者は観察会に参加し、対象植物の写真撮影や特徴の選択を行い、調査に貢献できる。
MappEnvは、救荒植物の植生調査をより効率的かつ正確に行えるよう、3つの新機能を追加した。これにより、調査の網羅性、発見効率、データの正確性が向上する。1つ目は調査範囲の偏りを防ぐチェックポイント機能と視覚的な誘導デザインである。主催者は調査対象や訪問ポイントを設定し、参加者はそのルートに従って調査を行うことで、網羅的なデータ収集が可能となる。2つ目は発見効率を高める近接生育率算出機能である。特定の植物と共に生育しやすい植物種を自動提示し、短時間で多くの有用データを収集できる。特に、経験の浅い参加者でも効率的に調査を進められる点が大きな利点である。3つ目は、専門知識不要で種を特定できる植物種同定機能である。大規模言語モデル(LLM)を活用した対話型の同定機能により、参加者が植物の特徴を選択すると、LLMが候補種を提示する。これにより、専門知識がなくても効率的な同定が可能となり、データ収集速度が向上する。これらの機能強化により、MappEnvは調査の負担を軽減しつつ、質の高いデータ収集を実現する。専門家には詳細で豊富なデータを、参加者には直感的で参加しやすい操作性を提供し、より広範な市民参加型調査を可能にすることを目指す。本発表では、各機能の詳細や今後の展望について述べる。