| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-230  (Poster presentation)

北海道における市民によるヒグマ対策の経緯と特徴【A】【O】
Circumstances and characteristics of volunteer activities to promote human-brown bear coexistence in Hokkaido【A】【O】

*伊藤泰幹(北海道大学)
*Taiki ITO(Hokkaido Univ.)

近年市街地へのクマ類の出没が社会問題となっている。出没を防ぐ1つの手立てとして、出没を未然に予防する対策が重要であるとされている。具体的には農作物を電気柵で囲うことでクマ類のアクセスを防いだり、藪などの刈り払い(草刈り)を行うことなどが挙げられる。出没を未然に防ぐ対策の中には、地域住民や町内会などの市民が担い手として期待されているものも存在する。こうした市民によるクマ対策を普及していくためには、対策自体が社会に広まっているかどうかを把握する必要がある。また、その経緯や文脈を明らかにすることで、今後の展開に役立てることができる。以上から本報告では、北海道に生息するヒグマを対象として、市民によるクマ対策がいつごろから、どのような文脈で広まってきたかを新聞記事から探索的に検討することを目的とする。
新聞記事の検索には北海道新聞の「どうしんDB」を使用し、1988年7月1日から2021年12月31日までの「クマ」または「ヒグマ」を含む記事(n=25427)を分析対象とした。記事のうち、ヒグマの出没対策に関連する文脈で「電気柵」の語を含む記事は305件、「草刈り」の語を含む記事は104件存在した。1991年に初めて記事に出現した「電気柵」の語は、2006年以降継続して出現するようになった。「草刈り」の語は、2000年から記事に出現するようになった。次に「電気柵」、「草刈り」を含む記事を対象としてKH Coderを用いた計量テキスト分析を実施し、どのような語が多く出現しているかを計測した。その結果、「電気柵」を含む記事は「道」や「出没」などの語が、「草刈り」を含む記事は「駆除」や「札幌」などの語が多く出現していた。さらに、どの語同士が同時に出現しやすいかを表現する共起ネットワーク図を作成することで、「電気柵」や「草刈り」がどのような文脈において報道されているかを分析した。その結果を受けて、今後の市民によるクマ対策の展開を検討する。


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