| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-236  (Poster presentation)

奥山での低頻度な非消費型人間活動が食肉目動物の日周性と生息地選択に与える影響【O】
The effect of infrequent non-lethal human activity on Carnivora species' daily activity pattern and habitat selection【O】

*安井理香, 平尾聡秀(東京大学)
*Rika YASUI, Toshihide HIRAO(University of Tokyo)

登山等の非消費型人間活動が野生動物に与える影響は広く研究されており、これらの活動が野生動物の日周性と生息地選択に影響を与えていることが指摘されている。日本では森林内の人間活動の量と質の変化が起きており、「里山の奥山化」が発生している。これに伴い食肉目動物の分布は拡大傾向にある。他方で、登山等の非消費型人間活動は人気があり、人間と食肉目動物が直接接触し軋轢が発生する可能性が高まっている。このため、奥山における非消費型人間活動が食肉目動物の日周性と生息地選択に与える影響を知ることは重要である。本研究では、奥山地域での低頻度の非消費型人間活動が食肉目動物の日周性と生息地選択に与える影響を調べた。調査は荒川源流に位置する東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林秩父演習林(以下、秩父演習林)の滝川流域で行った。滝川流域では狩猟が行われていないが、流域の東西で非消費型人間活動量が異なる。流域の東側は登山道が無いため登山者がほとんど入らないのに対して、流域の西側は登山道があるため登山者が入っており、秩父演習林関係者による野外調査も頻繁に行われている。本調査では、流域全体の64地点に自動撮影カメラを設置して取得された、2018年4月から2020年12月の食肉目動物のデータを解析対象とした。データ量を踏まえ、アナグマ、ツキノワグマ、ニホンテン、ハクビシン、ホンドキツネ、ホンドタヌキの6種を対象種とした。日周性はノンパラメトリックカーネル密度推定を、生息地選択はサイト占有モデルを利用し、それぞれを人間活動量が異なる流域の東側と西側で比較した。その結果、低頻度の非消費型人間活動に対する食肉目動物の応答は、種によってその有無と方向性が異なることが明らかになった。本発表では詳細な結果について報告し、奥山での低頻度な非消費型人間活動がそこに生息する食肉目動物に及ぼす影響について考察する。


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