| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-001 (Poster presentation)
外来種の鳴き声は類似する鳴き声をもつ在来種の種内コミュニケーションを妨害し、在来種の繁殖やエネルギー消費に負の影響を及ぼす可能性がある。他方、在来種は外来種の鳴き声に対して自身の音響ニッチ(鳴き方)を可塑的に変化させる音響適応を示すことが近年わかってきた。ヌマガエルFejervarya kawamurai は中部地方以西を自然分布域とする一方、1990年代に関東地方に国内外来種として侵入している。本研究調査地であるつくば地域では現在、筑波山系の南部にのみ外来ヌマガエルが侵入しており、北部は未侵入であることが発表者らによって確かめられている。そこで本研究では、外来ヌマガエルの音響ニッチ侵略に対して在来カエル類がどのような音響適応を示すのかを明らかにするために、つくば地域のヌマガエル侵入地域と未侵入地域における在来ニホンアマガエル(以下、アマガエル)の鳴き声を外来ヌマガエルの鳴き声を含めて比較した。フィールドワークは2024年6~7月に行われた。カエルの鳴き声はICレコーダーを用いて個体毎に取得し、その後、音響解析ソフトKaleidoscopeを用いて鳴き声の最高周波数(Hz)と最低周波数(Hz)、最大音圧周波数(Hz)、そしてピッチ(calls/sec.)を計測した。その結果、周波数は全ての項目でヌマガエル未侵入地域のアマガエル、侵入地域のアマガエル、ヌマガエルの順で低くなり、とりわけ最低周波数ではアマガエルの地域間で有意な差がみられた。鳴き声のピッチはヌマガエル未侵入地域のアマガエル、侵入地域のアマガエル、ヌマガエルの順で遅くなり、ヌマガエル未侵入地域のアマガエルとヌマガエル間でのみ有意な差がみられた。以上より、在来アマガエルの鳴き声はヌマガエル侵入に伴い、より低い周波数、そして遅いピッチに変化している可能性が示唆された。今後はその要因を探るべく、サンプル数を増強するとともに体サイズを考慮した解析を行う。