| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-010 (Poster presentation)
佐渡島は約300万年前に海面から隆起し、それ以降本土との地続きはなかったとされる 海洋島である。そのため、佐渡島には独自の生物相が形成されており固有種も存在する。しかし、植物に関しては群落構造の違いや一部の種の形態や遺伝構造に関する調査が行われてきたものの、未解明な点が多い。そこで本研究は、複数種を対象とし本土集団との形態比較を通して佐渡島における植物の特異性を明らかにすることを目的とした。本発表ではツクバネソウを対象に行った形態比較の結果について報告する。
調査は新潟県佐渡市の大佐渡・小佐渡、柏崎市米山、村上市(新保岳・吉祥嶽)において2024年4月から7月にかけて実施した。サンプリング後に押し葉標本を作製し、撮影した画像を用いてImageJにより計測を行った。測定形質は、葉の長さ・幅・葉身基部から最大幅までの長さ、萼片の長さ・幅、花糸・葯・花柄・茎の長さの9形質であり、それらから葉や萼片の形状比を算出した。これらのデータを用いてKruskal-Wallis検定の後にSteel-dwass法による多重比較検定を行い、各集団間の形態的差異を検証した。その結果、各集団間でいくつかの形質に有意な違いが見られた。大佐渡の集団は村上市に比べて萼片が有意に大きく、他地域と比較して花柄が有意に長いと示された。葉の形状比では、米山の集団が他地域よりも重心が低く、小佐渡・大佐渡の集団は村上市に比べてより長細い葉を持つ傾向があった。葯は大佐渡・村上市の集団が米山・小佐渡の集団より有意に長いことが示された。 形質のばらつきを比較するためBrown-Forsythe検定を行ったが、有意な差は見られなかった。今後は、多変量解析(GLMMやPCA)を用いた地域間の形質の違いの検討、およびGISを用いた形質の地理的傾向の可視化を行い、標高・気温・降水量などの環境要因との関連を解析する予定である。