| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-012  (Poster presentation)

新潟県の地すべり地を中心としたため池の生物相と環境との関係【O】
Relationship between aquatic biota and environment of irrigation ponds around landslide in Niigata Prefecture.【O】

*大関佑弥(水辺カオス), 清水哉多(新潟市水族館), 指村奈穂子(水辺カオス), 小林幸平(新潟大学)
*Yuya OSEKI(Aquatic Chaos), Kanata SHIMIZU(Niigata City Aquarium), Naoko SASHIMURA(Aquatic Chaos), Kouhei KOBAYASHI(Niigata Univ.)

新潟県上越地域は棚田が多く作られ、特に水生生物の生物多様性が高い地域である。この棚田が作られた地形的要因として、地すべり地であることが挙げられるが、地すべり地がため池の水生生物へ与える影響について調べた研究は少ない。本研究では、ため池の水生生物相を調査し、環境条件との関係を解析することで、地形が水生生物相に与える影響について考察した。
新潟県上越市の地すべり地を中心にため池を合計50カ所選び調査した。ため池の動物相は、2024年の5月から10月にかけて、タモ網を用いて2人で5分間の掬い取り採集をし、捕獲した動物の種と個体数を記録した。また環境要因として、池の面積、水温、DO(溶存酸素量)、pH、水面の浮葉植物と抽水植物の被度を測定したほか、地すべり地の度合いを数値化するため、調査地点を中心に半径1kmのバッファを発生させ、その中に存在する地すべり移動体面積を計算した。
調査の結果、計43科90種の動物を捕獲し、このうち種数の多い分類群から順に昆虫類が58種、両生類が10種、軟体類が9種であった。生物種と環境の関係を序列化するために、ため池ごとに採集した種の個体数を目的変数とし、環境要因を説明変数としたCCA(正準相関分析)をおこなった結果、CCA1軸は地すべり移動体面積と、CCA2軸はDOと相関があった。このため、地すべり移動体面積と種数の関係をみたところ、種数において正の相関が、外来種数に負の相関が見られた。また、地すべり移動体面積と種数の関係を分類群ごとに見ると、昆虫類においては正の相関が、魚類においては負の相関が見られた。以上のことから、地すべり地は、人が利用する以前に既に湿地環境が形成されていること、アクセスの悪さにより外来種が持ち込まれる頻度が低いことなどの要因により、高い生物多様性が維持されていると考えられた。


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