| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-014 (Poster presentation)
キク科センダングサ属(Bidens)のコセンダングサは江戸時代後期から明治時代かけて日本に侵入した外来種であり、日本の生態系等に被害を及ぼすおそれのあることから平成27年まで外来生物法で要注意外来生物に指定されていた。また、コセンダングサは動物に付着して種子散布するため、犯罪捜査の過程において鑑定資料となることがある。鑑定にあたり、試料がある地点由来であったか判断を求められることがあり、その際、時間経過に伴う集団の変化について考察に入れる必要が生じる。しかし、演者の知る限り同一地点のコセンダングサが経年に伴いどのように変化するか知見はない。そこで本研究では、同一地点で3年にわたり採取したコセンダングサの多型情報が毎年どのように変化していくのか調べることとした。
千葉県、埼玉県および神奈川県で、1地点につき4-10試料のコセンダングサを採取して試料とした.千葉県、埼玉県の採取地点では採取2年目、3年目と時間を経るとともにコシロノセンダングサとの交雑が進み、コセンダングサが採取できない場合もあった。採取した試料の一塩基多型(SNP)はMultiplexed ISSR Genotyping by sequencing PCR(MIG-seq)法により、ゲノムワイドに探索した。分析は各試料2回ずつ実施した。
その結果、採取したどの地点でも時間を経るごとに共有SNPsの減少が認められた。コシロノセンダングサとの交雑種であるアイノコセンダングサが認められない神奈川県の採取地点においても、経年による遺伝的分化が認められた。これらの結果は採取年の違いにより集団が変動することを実証するものであり、採取年が異なる同一地点由来の試料を解釈する際考慮に入れることが必要であると考えられた。