| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-021  (Poster presentation)

環境DNA分析を用いた水田におけるカエル類の個体数密度と景観要因の関係の解析【A】【O】
Analysis of frog density and landscape factors in rice fields using environmental DNA【A】【O】

*小倉彰紀(神戸大学), 邬倩倩(神戸大学), 中尾遼平(山口大学), 丑丸敦史(神戸大学), 源利文(神戸大学)
*Akinori OGURA(Kobe Univ.), Qianqioan WU(Kobe Univ.), Ryohei NAKAO(Yamaguchi Univ.), Atushi USHIMARU(Kobe Univ.), Toshifumi MINAMOTO(Kobe Univ.)

 水田は自然湿地の代替環境として、多様なカエル類の生息地となってきた。しかし、農業の近代化に伴い、その生息地としての環境は劣化しつつある。カエル類の生息地を保全するためには、水田におけるカエル類の生息状況と環境の関係の把握が重要であるが、捕獲調査や目視観察などの従来の調査は労的コストが大きく、広範囲の調査が難しい。そこで、現地でのサンプリングが採水のみであるために労的コストが小さく、短期間に広範囲な調査が可能な環境DNA分析手法を用いて、トノサマガエルの生息状況を調査した。調査は兵庫県南東部に位置する16区域(伝統地:8区域、整備地:8区域)の水田地帯で実施した。各区域で、2018年の夏季(6月~7月)に水田2地点、ため池2地点、用水路1地点で採水したサンプルからDNAを抽出し、新たに設計したトノサマガエルの検出系を用いて、リアルタイムPCRを実施した。そして、水田地帯の利用形態などの人為的要因と、景観スケールにおける自然環境要因を総合的に考慮し、トノサマガエルの生息に影響を与える要因を推定する目的で、一般化線形混合モデルによる解析を実施した。目的変数にPCRを3繰り返し行った際の陽性率、説明変数に水田の利用形態(伝統地 or 整備地)、水質、標高、土地利用、気象条件を用いたモデルを作成して解析を行なった。
 その結果、標高は陽性率と正の関係を示した。水質項目では、電気伝導度が陽性率と負の関係を示した。一方で、伝統地と整備地では、陽性率の平均値に有意な差は認められなかった。本研究により、水田地帯の標高がトノサマガエルの分布を規定する可能性が示唆され、山地の水田の維持が本種の保全に繋がると考えらえる。


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