| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-026  (Poster presentation)

アオウキクサの網羅的な異系統混合培養による多様性効果の定量【A】【O】
Quantifying diversity effects through pairwise strain mixtures in Lemna aequinoctialis【A】【O】

*沼尾侑亮(千葉大・理), 高橋佑磨(千葉大・院・理)
*Yusuke NUMAO(Fac. Sci., Chiba Univ.), Yuma TAKAHASHI(Grad. Sci., Chiba Univ.)

生物多様性-機能関係は、種間での生態的特性の差異に起因する相補性効果と選択効果、促進作用といった効果を背景に群集内の種数の増加とともに向上することが多い。一方で、この関係は、特定の種の個体で構成される個体群のなかでも現れ、遺伝的に多様な個体群は遺伝的に画一的な個体群よりも生産性や安定性が高まる。多様性効果の強さは、遺伝子型の組み合わせよって変化することが知られているものの、その一般則を理解するには至っていない。本研究では、小規模なスペースで個体群増殖の観察が容易なアオウキクサ(Lemna aequinoctialis)について、日本全国の14地点に由来する同質遺伝系統から、2系統ずつを網羅的に組み合わせて共培養する実験を行ない、増殖速度に対する多様性効果の方向性や強さと、それらを規定する表現型多様性を探索することを目的とした。まず、一定環境で系統ごとに培養された14系統について形態測定をしたところ、系統間で遺伝的な形態変異があることがわかった。また、培養実験は太陽光LEDを用いた14L10Dの環境下で行なわれ、培地で満たされた容器内に各系統のフロンドを4枚導入して培養した。上方から6時間おきに7日間タイムラプス撮影を実施し、得られた画像から緑色の葉状体(フロンド)の面積を定量した。増殖速度は0日目のフロンド面積に対する6日目のフロンド面積の割合から算出した。すべての組み合わせについて、混植処理時の増殖速度の実測値と混植に用いた2系統それぞれの単植処理時の増殖速度の平均値との差を多様性効果の強さとして算出した。その結果、多様性効果は組み合わせにより異なることがわかった。つぎに、各系統の組み合わせ間の多様性効果のばらつきを生み出す表現型変異を推定するために、多様性効果を被説明変数、各種形質の表現型距離を説明変数とする重回帰分析を実施した。これらの成果をもとに、多様性効果を生み出すメカニズムを考察する。


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