| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-028  (Poster presentation)

局所スケールにおけるオオバコ属植物2種のすみわけ機構【A】【O】
Habitat segregation mechanisms of two Plantago species at a local scale【A】【O】

*安岡由都(京都大学, 滋賀県立大学), 荒木希和子(滋賀県立大学)
*Yuto YASUOKA(Kyoto Univ., Univ. Shiga Pref.), Kiwako S. ARAKI(Univ. Shiga Pref.)

野外ではニッチが重複する種が同所的に存在することがある。オオバコ属の多年生草本である在来種オオバコ(Plantago asiatica)と帰化種ヘラオオバコ(Plantago lanceolate)は、広域では分布が重ならず、わずかな環境の違いによりすみわけているものの、同所的に分布する場合がある。本研究では、オオバコ属2種の共存メカニズムを明らかにすることを目的とし、個体群構造と環境選好性の調査にもとづき両種のすみわけ過程を解析した。
2023年に滋賀県立大学の構内で2種が同所的に分布する場所に5 × 1 mのトランセクト調査区を設置し、2種の個体の追跡モニタリング調査から個体群構造とその成長率を調べ、種間競争と種内競争を検証した。また2種がそれぞれ優占する場所で相互移植実験を行い、ホームアドバンテージの有無から環境の選好性を確認した。
個体群調査の結果、2種が同所的に分布する場所では、オオバコは分布の重複に関係なく同程度に成長していた。一方、ヘラオオバコはオオバコとの分布の重複により動態に違いがみられ、分布の重複している場所では死亡率が低く、生存している個体は長い葉を維持していたのに対し、重複しない場所では葉が短くなり衰退傾向だった。よって、2種の分布が重なる場所ではヘラオオバコの種内競争は緩和され、より大きいサイズで存続できることが示唆された。また相互移植実験の結果より、オオバコは生育地間で成長に違いがなく、ホームアドバンテージが見られなかった。一方でヘラオオバコは、ヘラオオバコの生育地で成長率が高かったことから、適した環境に生育しており、環境選好性が高いことが示唆された。したがって、分布の重複する場所では種間相互作用と微環境との関係、ならびに生育場所の攪乱により2種の共存が可能となっていると考えられる。


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