| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-032 (Poster presentation)
山口県秋吉台の火入れ草原ではネザサが優占種となっている。ネザサは毎年小面積で開花・枯死を繰り返しており、その跡地では他のイネ科草本が優先する場合が多いが、ワラビが侵入・繁茂する場合もある。標高280m程度の場所に設定した試験地では、2020〜2022年にかけてネザサの枯死とワラビの侵入により優占種の交代が起こった。そこで、ネザサからワラビへの優占種の交代が草原性植物の開花にどのような影響があるのかを検討するため、ネザサ優占であった2006〜2018年と、ワラビ優占となった後の2023年で、開花茎数や植生の変化を比較した。
試験地は10m×14mの方形で、その中を2m×2mに区切り、35個のプロットを設定している。調査内容は、5、7、9、11月にプロットごとに種別の開花茎数計測、5個のプロットにおいて7月と11月に植生調査、2007、2009、2011年と2023年の9月には光量子密度の測定を行った。
ワラビの繁茂は放牧地等においてはシバや牧草類の成長を阻害するため、放牧利用においては深刻な問題とされているが、ネザサ優占の場合でもススキ優占地等に比べて地上近くまで届く光は少ない。そのため、ネザサからワラビへの優占種の交代が草原性植物の開花に及ぼす影響は大きくないものと思われた。