| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-033  (Poster presentation)

中山間地域におけるクズの分布変遷と土地利用の関係【A】【O】
Land-use change affects distribution of Kudzu in the hilly and mountainous area【A】【O】

*井川絢香, 西尾孝佳(宇都宮大学)
*Ayaka IGAWA, Takayoshi NISHIO(Utsunomiya Univ.)

クズは、アジア原産のマメ科の落葉性木本つるで、国内外で最も侵略的な植物種のひとつである。その管理においては侵略的な挙動が広範囲に及ぶ状況から、防除とともに管理対象の優先順位付けが不可欠である。クズの挙動は、パッチ(局所的集団)の成長、景観全体にわたるパッチの配置といった異なる段階の組み合わせとして理解できる。さらにクズの分布は攪乱と関係が深く、土地利用変化の影響を考慮すればクズが繁茂しやすい立地を推定できるかもしれない。そこで本研究では、高齢化および過疎化の著しい中山間地域を対象に、土地利用との関係からクズの繁茂や衰退のパターンを明らかにすることを目的とした。 調査は栃木県那須烏山市大木須地区で実施した。現地踏査によって得たパッチの形状と位置に基づき最新の分布図を作成した。最新の分布図は、2016年の調査結果と比較しクズの分布変遷を評価した。また空中写真判読と現地踏査で得られた情報を基に、土地利用土地被覆(LULC)の分類と耕作放棄の時間的推移の推定を行い、クズの分布変遷との対応を解析した。対象地域のクズの分布面積は、2016年から2023年にかけて変化率として26%拡大し、パッチ数で131個増加した。特に、耕作放棄畑、耕作放棄水田、休閑地において占有面積が大きいことが分かった。また、耕作放棄水田では減少傾向、耕作放棄畑では増加傾向が認められた。クズの分布変遷は、放棄後しばらくは増加するが、一定の時間が経つとその傾向は弱まった。土地利用との関係においては、河川は各パッチを拡大させる可能性が高かった。以上より、調査対象とした中山間地域に繁茂するクズは、耕作放棄後の遷移にともなって増加速度が減少すること、特にその傾向が水田の耕作放棄で強いこと、集落内の河川がパッチ拡大を促進していることなどが示唆された。


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