| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-034 (Poster presentation)
森林は、広葉樹や針葉樹など様々な樹種で構成されている。その森林タイプによって、流域内の渓流に生息する水生昆虫相が異なることは分かっている。しかし、渓流の珪藻においては、流域森林の構成樹種の違いと珪藻群集との関係について、あまりよく分かっていない。渓流域の植生は、人工林針葉樹のみで構成されたものから、落葉樹、常緑樹、針葉樹など様々な樹種で構成されたものまで、バラエテイーに富んでいるが、この研究では、日本の最も一般的な森林タイプである老齢広葉樹林の流域と人工針葉樹林の流域内の渓流に生育する珪藻類を比較した。四万十川支流・黒尊川流域内に存在する広葉樹天然林流域と針葉樹人工林流域を調査地域とし、各流域にて珪藻の定量採集を行い同定した。流域植生は林野庁の事業計画図を基に調べた。水温、気温、pH、EC、Do、クロロフィル量も各調査地点ごとに調べた。老齢広葉樹林流域を流れる渓流と人工針葉樹林流域を流れる渓流に存在する珪藻数は、老齢広葉樹林流域内の渓流の方が有意に多くなったが、種数・属数・科数には違いがみられなかった。しかし、珪藻の群集構造は老齢広葉樹林流域を流れる渓流と人工針葉樹林流域を流れる渓流で異なっており、この違いは主にGomphonema属、Planothidium属、Navicula属の珪藻が存在するかどうかによってもたらされていた。森林タイプによる珪藻群集の違いや細胞数の違いは、森林タイプの違いがもたらす光条件や土壌のアルカリ度などの環境条件の違いを反映していると考えられた。