| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-035  (Poster presentation)

さとやまのくも2 -耕作放棄地の発生が里山における農業景観のクモ群集に及ぼす影響-【A】【O】
Spiders in Satoyama 2 -The effect of abandoned farmland on spider communities in agricultural landscape of Satoyama-【A】【O】

*島内梨音(東京都立大学), 大澤剛士(東京都立大学), 馬場友希(農研機構)
*Rion SHIMAUCHI(Tokyo Metropolitan Univ.), Takeshi OSAWA(Tokyo Metropolitan Univ.), Yuki BABA(NARO)

近年の農地の生物多様性に大きく影響している要因として、圃場整備と耕作放棄を挙げることができる。これらはしばしば表裏一体のように捉えられるが、圃場整備は行政事業等によって地域ごとにまとまって実施される一方で、耕作放棄は農地の管理者や所有者個人の判断等によって圃場単位で虫食い状に発生するという空間スケールの違いが存在する。この結果として、耕作放棄地には、圃場整備を経験したものと、経験していないものが混在している。しかし、圃場整備の有無を考慮して耕作放棄が農業生態系にもたらす影響を評価した例は少なく、これまでの知見は、耕作放棄による影響と圃場整備による影響が混在したものになっている可能性がある。
そこで本研究は、圃場整備による影響と耕作放棄地が持つ影響を切り分けられる調査デザインを設定した上で、耕作放棄地が農地の生物多様性に及ぼす影響を検討することを目的とした。対象は、農地の生物多様性の指標として用いられるクモ類とした。調査方法として、整備経験農地、整備未経験農地それぞれで圃場を営農畑、営農水田、放棄水田の3タイプに分類し、各調査地点で決まった採集方法で、複数時期にわたりクモを採集した。その結果、土地タイプごとの種数・個体数は圃場整備経験の有無にかかわらず放棄水田が最も多くなる傾向が検出された。ただし、この傾向は調査時期によって変化することも示唆された。得られた結果から、圃場整備と耕作放棄それぞれが農地のクモ群集に及ぼす影響について議論する。


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