| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-037  (Poster presentation)

ノキシノブの葉含水特性と降水現象にに対する反応性【O】
Frond water content characteristics of Lepisorus thunbergianus and their response to precipitation events【O】

*比嘉基紀, 松岡夏希(高知大・理工)
*Motoki HIGA, Natsuki MATSUOKA(Fac. Sci. Tech., Kochi Univ.)

ノキシノブLepisorus thunbergianus(広義)は,樹木や岩のほか,市街地の屋根や雨樋など乾燥ストレスの影響を受けやすい場所に着生するシダ植物である。近年,ノキシノブ(広義)は3種に分けられ,ノキシノブ(狭義)は広義のノキシノブから分けれたクロノキシノブ(Lepisorus nigripes)と雑種を形成する。本種は,気孔密度が低く,水利用効率が高いことが知られている。Lepisorus nudusはDesiccation toleranceを持つ復活植物とされている。ノキシノブも同様の乾燥耐性を有しており,葉含水率が気象条件(降雨―晴天)に対応して変化している可能性がある。本研究の目的は,2日間の連続降雨を想定した条件下および降雨終了後の乾燥過程を想定した条件下での葉含水率及び生理活性の変化を明らかにすることである。高知大学構内でサンプルを採取して種同定を行った結果,ノキシノブ(狭義)と雑種の特徴を有するものが確認されたが,形態的な差異は連続しており種を細分できなかった。以降では広義のノキシノブとして実験を進めた。採取したサンプルの根元を2日間蒸留水に浸し吸水させた。十分に吸水したサンプルについて,湿重量と葉面積を測定した後,恒温条件下(20℃,湿度82.12±7.73%)に7日間置き相対含水率(RFWC)の変化を測定した。7日間乾燥させたサンプルは,再度蒸留水に浸して吸水させてRFWCの変化を測定した。吸水条件から乾燥条件へ移行後(降雨終了後),約2日でRFWCは約50%に低下し,7日後後には約30%以下に達した。乾燥させたサンプルのRFWCは,吸水条件移行後1日で約60%に回復し,2日後には80%以上まで回復した。RFWCの低下とともに光合成速度(気温10℃,PPFD500 μmol/m2/s)は低下し,RFWC46%までは光合成活性が確認された。本種は,降雨減少に対応して葉含水率が変化すること,1週間程度降雨のない(見た目では萎れている)状態でも光合成活性を維持できることが明らかとなった。


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