| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-038  (Poster presentation)

春咲き・秋咲き植物の開花フェノロジーは、どのように温暖化の影響を受けているのか?【O】
Phenological shifts in spring- & autumn-flowering species in Japan based on long-term monitoring data from Tsukuba Botanical Garden【O】

*永濱藍, 植村仁美, 二階堂太郎(国立科学博物館)
*Ai NAGAHAMA, Hitomi UEMURA, Taro NIKAIDO(NMNS)

被子植物の開花開始日は、温暖化に伴う気温上昇の影響を強く受ける。これまでの欧米の温帯域における先行研究により、気温上昇時に、春咲き種は早く咲き、秋咲き種は遅く咲くように変動すると考えられてきた。しかし、日本の植物種においても、その両方向の変動が観察されるのかは明らかではなかった。そこで、本研究では、筑波実験植物園において2003-2022年(20年間)にわたり記録された、日本在来種344種の開花フェノロジーデータに基づき、①それらが気温上昇によりどのように影響を受けるのか、②気温上昇の影響を受ける種は、過去20年間で開花開始日に変化が見られるのかを検証した。その結果、春先(3月)から初夏(6月)にかけて開花した120種は、気温上昇により負の影響を受ける(開花開始日が早くなる)こと、秋(9〜11月)に開花した18種は、気温上昇により正の影響を受ける(開花開始日が遅くなる)ことが明らかになった。また、前者のうち28種は、過去20年間で開花開始日が有意に早くなり、後者のうち13種が過去20年間で開花開始日が有意に遅くなっていた。これらの傾向は、先行研究で示された傾向と一致した。また、本研究により、明瞭な変動が観察されなかった種は、気温以外の気象要因の影響を強く受ける可能性が示唆された。


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