| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-039  (Poster presentation)

開花が生じたハチク個体群の変化パターン【A】【O】
Changes in a flowering population of Phyllostachys nigra var. henonis【A】【O】

*仙石真友美, 籠谷泰行, 荒木希和子(滋賀県立大学)
*Mayumi SENGOKU, Yasuyuki KAGOTANI, Kiwako S. ARAKI(Univ. Shiga Pref.)

タケ類は地下茎によるクローン繁殖で個体群を維持し、数十~数百年間隔で一斉開花・枯死する。温帯に生育するハチクPhyllostachys nigra var. henonisは約120年周期で開花するとされ、近年全国で開花が確認されている。ハチクは開花後に地上部は枯死するものの、地下茎は生存し続けて矮小ラメットを生産する。本研究では、2020年と2023年に部分的な一斉開花が起きた滋賀県東近江市の「河辺いきものの森」のハチク林を対象に、開花にともなう個体群の変化を明らかにするため開花・未開花エリアの稈の形態や出現頻度の違いを調査した。竹林内に2020年開花区、2023年開花区、未開花区を設定し、稈を含む植生と矮小ラメットの出現頻度を記録した。また開花・未開花エリアが連続する場所に10×50 mのトランセクト調査区を設け、稈の分布を調べた。 未開花区では5~6月に通常の当年生稈が出現し、開花区では5~7月に矮小ラメットのみが確認された。2023年開花区では翌年に出現した矮小ラメットの一部が開花したが、2020年開花区ではほとんど開花しなかった。2020年開花区ではつる性植物や陽樹の稚樹が増加し、下層植生の変化が示唆された。トランセクト調査区では未開花と開花の稈が混在している部分があり、413本のうち273本が2023年の開花稈で、2023年か2024年に出現した矮小ラメットは350本だった。2024年の当年生稈は15本で、1本を除きすべて未開花稈の周囲で確認され、矮小ラメットは開花稈の場所に多く、高密度で分布していた。したがって、開花後には通常の稈の出現が抑制され、矮小ラメットをより多く生産するクローン繁殖様式に変化するが、その頻度は時間の経過とともに低下することが明らかとなった。これらの挙動はハチク個体群の維持や植生変化にも影響すると考えられる。


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