| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-045 (Poster presentation)
近年の日本の都市部では再開発に伴い緑地が増加しており、これらの緑地をどのように整備することが生物多様性向上に有効なのかを検証する必要がある。移動性が高く、都市の生物多様性の指標として適している越冬期の鳥類を対象分類群とし、都市域と郊外域で定量調査を行った。東京都内4地域(都市部;赤坂、品川、郊外;国分寺、豊田)80地点において5分間のポイントセンサスを2022年1-2月の越冬期に6回実施した。各種の調査ごとの出現の有無を応答変数としたロジスティック回帰を行い、AIC最小のデルをベストモデルとして選択した。鳥類調査では27種の鳥類が観察され、全480回の調査の中で出現頻度の高い種はヒヨドリ(255回確認、以下カッコ内同意)、メジロ(168)、シジュウカラ(157)、スズメ(141)、カワラバト(83)だった。出現頻度上位15種の各種についてのロジスティック回帰のベストモデルでは、多くの種で100mバッファの都市面積が負の係数を持っていた。これは都市面積の逆を意味する調査地点周辺の緑被面積が鳥類の出現に寄与している可能性を示している。また、都市と郊外の環境の違いを表すことを期待して設定した500mバッファの土地利用では、草地面積が正の係数となることが多く、草地面積は周辺環境を表す指標として有用な可能性が示された。一方で、500mバッファの都市面積は都市依存種と都市忌避種で正負が分かれる指標となると予測していたが、どの種に対しても正の係数となることが多く、予測とは違う結果となった。以上の結果より、都市緑化の際は都市部・郊外部に関わらず、狭い範囲での緑被率を多くすることが鳥類の生息地拡大に役立つことが示唆された。ただし、今回のモデルは適合度が低いため、鳥類出現に寄与する変数を引き続き探索する必要がある。