| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-046  (Poster presentation)

ため池が陸棲鳥類の多様性を高めている?【発表取消/Cancelled】【O】
Farm ponds also enhance diversities of terrestrial birds?【発表取消/Cancelled】【O】

*藤田剛(東京大学)
*Go FUJITA(Univ. of Tokyo)

 かつての水田景観では、ため池が安定した水系として機能し、淡水生物の主要な生息地であったと考えられる。とくに田植え時期に雨が少ない地域などに高密度で分布する場合が多い。近年、大規模な農業用水の整備によってため池が不要になった地域が増え、ため池が放棄されたり、防災のために堤を一部排除されたりする地域もある。
 ため池には、カエル類のように生活史の一部をため池に依存しながら、発生にともなって水条件がより不安定な水田や放棄地などへ移動する小動物が生息する。これらため池から周囲の農地などへの小動物の移動は、直接溜池を利用する水鳥などの捕食者だけでなく、水田景観を主な生息地とする陸棲捕食者の生息分布にも影響していると予想できる。
 演者は、東北東部に位置する北上盆地の農地景観に注目し、ため池と、農地を主な生息地とする鳥類の分布との関係を調べている。北上山地西端のなだらかな丘陵を覆う水田地帯では、田植え期の降水量が少なく北上川などからも離れているため、水源として数10m四方の小さなため池が高密度で分布している。また、恐らく冬期の低温によるため池の凍結が主な原因で、ウシガエルなど侵略的外来種が分布していないため、ため池の淡水生物がかつての状態で生息している可能性が高い。
 本研究では、北上盆地中東部の25×10kmの水田地帯に配置したおよそ1km四方の調査区29か所を対象とした。調査区はサシバなど猛禽を含む多くの陸棲鳥種の行動圏を複数含むことのできる広さで、ため池は0-14個確認できた。調査は2022年から3年間、繁殖期から越冬期にかけ通年実施した。各調査区内に設置した調査ルートを徒歩で移動しながら確認した種と位置を記録した。解析では、記録された鳥の分布と、ため池の大きさや形状、植生との関係を調べた。この際、水田や放棄地、草地、二次林や植林、冬期は積雪範囲も解析に含めた。その結果を報告する。


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