| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-047 (Poster presentation)
中央アジアのキジルクム砂漠は年降水量が50~250mmと極めて少ない地域であるが、冬から春にかけての僅かな降水に依存する草本やArtemisia diffusaなどの灌木が乾性草原を形成している。一方で、点在する塩性低湿地には、乾性草原とは異なる草本種やTamarix hispida、Haloxylon ammodendronなどの木本種が群落を形成している。本研究では、この地域で報告されている植生の変化と降水量や地下水量など水資源量の減少との関係を解明するための第一歩として、上記の各植生の主要樹種3種をGoogle Earth上で公開されている高解像度衛星画像において判別する手法を構築した。キジルクム砂漠南東部のキジルケセク地区(41°06’ N、64°54’ E)に設定した11×13kmの調査区内の被圧地下水の自噴点(以下、湧水点)周辺の低湿地13サイトと、対照として湧水点から離れた地点に位置する乾性草原9サイトにおいて、GPS機能付きデジタルカメラもしくはアクションカメラを用いて植生写真の撮影と位置情報の取得を行った。これらの写真とGoogle Earthの高解像度衛星写真(解像度15m、2015年2月、2023年6月、同年11月撮影)とを位置情報に基づいて照合した結果、上記の3樹種は樹冠密度や樹冠径、それらの季節変化の違いによって判別できること、湧水点近傍にT.hispidaの群落が分布し、その周りに湿性草原群落が分布していることが分かった。さらに、Google Earthのポリゴン機能を使って各群落の面積と湧水点との関係を調べたところ、T.hispida 群落、湿性草原群落ともに湧水点から群落の最遠点までの標高差が負に大きいほど群落面積が大きくなったことから、これらの群落の形成には被圧地下水の自噴点の存在とその地点からの標高差が大きく関与していることが示唆された。