| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-051  (Poster presentation)

SSR-seq解析による東日本太平洋側における海浜植物3種の集団遺伝構造の比較【A】【O】
Comparison of the population genetic structure of three coastal plant species along the Pacific side of Eastern Japan using SSR-seq analysis【A】【O】

*秋本香奈子(お茶の水女子大学), 児玉円(お茶の水女子大学), 田中啓介(東京情報大学), 甲山哲生(東京大学), 松林圭(酪農学園大学), 秋田晋吾(北海道大学), 岩崎貴也(お茶の水女子大学)
*Kanako AKIMOTO(Ochanomizu University), Madoka KODAMA(Ochanomizu University), Keisuke TANAKA(TUIS), Tetsuo KOHYAMA(Tokyo University), Kei MATSUBAYASHI(Rakuno Gakuen University), Shingo AKITA(Hokkaido University), Takaya IWASAKI(Ochanomizu University)

海浜は貧栄養な砂地、高い地温、塩水など植物にとって厳しい環境である。この環境に生育する海浜植物の集団は都市開発や護岸工事、浸食などの影響を受けやすく、現在では海岸線に点々と孤立して存在していることが多い。この状況の中で、多くの海浜植物における集団形成・維持は、種子が海流で遠くへ運ばれる海流散布によって果たされていると考えられている。しかし、海流の影響を実際に推定した例は、大陸レベルの広い範囲での研究がほとんどで、狭い地理的スケールで調べた研究は少ない。本研究では、日本の海浜に広く分布し、生活史や分布特性が異なるハマヒルガオ、ハマエンドウ(この2種は長期間の海流による種子散布が可能)、ケカモノハシ(短い時間しか海流による種子散布ができない)の3種に着目し、東日本太平洋側地域における詳細な遺伝構造を比較することで、海浜植物の集団形成・維持のメカニズムを明らかにすることを目的とした。
海流によって長距離分散が可能である場合、遺伝構造はかなり弱いものになることが予想されるため、次世代シーケンサーで多型性の高いSSRマーカーを多数ジェノタイピングすることで、高解像度の解析の実現を目指した。最初にMiCAPs法を用いて核マイクロサテライト配列とその近傍領域をゲノムワイドに検出した。さらに、そこから各SSR遺伝子座を増幅するプライマーを設計し、各種で数十~数百の遺伝子座に着目して遺伝子型の決定を行った。また、各種について生態ニッチモデリングによる古分布推定を行った結果、ハマエンドウでは最終氷期でも北方地域にまで分布適地が推定されるのに対し、ハマヒルガオやケカモノハシでは南方地域にしか推定されなかった。本発表では、得られた遺伝子型データに基づいて推定した種内遺伝構造を比較し、種間でみられた差異とその要因について、生態ニッチモデリングの結果や各種の生活史特性の違いから考察した結果を報告する。


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