| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-053  (Poster presentation)

都市の緑地における訪花昆虫の多様性に影響を与える緑地内外の環境要因【O】
Environmental factors within and surrounding urban green spaces affecting the diversity of pollinators【O】

*今藤夏子(国立環境研), 辻本翔平(名城大), 角谷拓(国立環境研), 伊藤洋(国立環境研), 西廣淳(国立環境研)
*Natsuko KONDO(NIES), Shohei TSUJIMOTO(Meijo Univ.), Taku KADOYA(NIES), Hiroshi C ITO(NIES), Jun NISHIHIRO(NIES)

花粉を媒介する訪花昆虫の減少が世界的に報告されており、野生植物の個体群維持だけでなく農作物生産への影響も懸念されている。日本の農業生産において訪花昆虫がもたらす経済的価値は数千億に上り、その70%は野生の訪花昆虫がもたらしているという報告もある(小沼、大久保 2015)。今後も農業生産を維持するためには、多様な野生訪花昆虫が安定的に農地へ供給される環境を維持していく必要がある。その際は里山環境だけでなく、都市や都市近郊の緑地を含む都市生態系も積極的に活用し、地域全体の訪花昆虫生態系をより堅固にすることが重要であると考えられる。本研究では、茨城県つくば市周辺の都市および都市近郊の緑地において、訪花昆虫の多様性が緑地のどのような緑地内環境や空間的配置によって説明されるかを調査した。
調査対象の緑地は、都市公園法により設置された公園13カ所とそれ以外の公園や緑地4か所とした。2024年4月と5月の各月1回、各15分間で長さ25m幅5mのパッチに訪花した昆虫の種類と個体数を記録した。その結果、全公園で合計84種515個体が観察され、ハチ目が40種、ハエ目が29種と全種数の80%を占めていた。また、訪花昆虫のSimpson多様度を被説明変数、緑地内環境(花資源面積、緑地面積、緑地内の花壇の有無)や緑地タイプ(都市公園法等による種別)、緑地の管理主体、周辺土地利用別面積(調査地点からの指定距離内、100~2000mの7スケール)を説明変数として重回帰分析を行った。各緑地のSimpson多様度は、どの空間スケールにおいても緑地タイプが有意な正の影響を与えていた。緑地タイプは緑地の設置目的や管理方針を反映していると考えられ、今後は訪花昆虫の多様性に影響を与える具体的な管理方法を明らかにする必要がある。このほか、緑地タイプを除いて重回帰分析を行った結果についても報告する。


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