| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-054  (Poster presentation)

成田市の谷津に生息する淡水生カメ類の生態【A】【O】
The ecology of freshwater turtles living in the Yatsu area of ​​Narita City【A】【O】

*水本彩月, 倉本宣(明治大学)
*Satsuki MIZUMOTO, Noboru KURAMOTO(Meiji Univ.)

本研究では筆者が幼少期から観察をしてきた成田市の小橋川流域の谷津において、カメ類の生態を通して里山ランドスケープの変化を検討した。2024年8月から11月の捕獲で48個体のカメ類が捕獲された。約50%がクサガメ、約40%がアカミミガメであった。スッポンとイシガメは少数であった。さらに捕獲された24個体のクサガメのうち外部形態よりイシガメとの交雑個体であると推測される個体が11個体確認された。小橋川のイシガメ個体群の崩壊にはクサガメによる遺伝子汚染の影響が大きいと考えられた。クサガメの糞内容物には昆虫、植物、貝類が確認され、陸上植物では茎葉部分も果実部分も摂食していた。小橋川の生育するヨシ群落の根本に土が堆積し、小さな泥の陸地を多数形成していた。カメ類は頻繁に日光浴場所として利用していた。水中との連続性がなだらかであるため登りやすく、多数存在することで日光浴場所を巡る競争を緩和に寄与していたと考えられる。
小橋川は細長い形態からランドスケープの構造からはコリドーに分類される。カメ類の生存や個体群の維持に必要な採餌場所、日光浴場所、避難場所が全て揃っていた。さらに再捕獲個体が3個体で、筆者が標識した個体ではない標識個体が複数捕獲され、GPSデータロガーが回収できなかった。このことから、機能としては移動経路と生息地という2つの機能を持ち合わせている。筆者の幼少期からの変化としては水田管理が行われなくなったことに伴う草刈りなどの人為的な管理の減少が大きな影響を与えていると考えられる。


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