| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨 ESJ72 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-058 (Poster presentation)
里山景観に代表される二次的自然環境は、生物多様性のホットスポットとなっている。しかしながら、近年、農業従事者の減少にともない、耕作放棄地が拡大している。水田の放棄後の植生遷移は、土壌特性や地形条件などの環境要因に依存して多様なパターンを示し、それにともなう生物群集の応答も生物分類群によって様々である。耕作放棄地の拡大が生物多様性へ及ぼす影響を評価するには、環境の変化に鋭敏に反応する生物分類群を中心に評価することが有効である。そこで本研究では、新潟県佐渡市を対象に、耕作放棄地の拡大が鳥類の生息地選択に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
種ごとの分布と環境要因の関係を明らかにするため、ラインセンサスにより取得した在不在データ(1・0)を応答変数、JAXAの土地利用土地被覆図から抽出した佐渡市の土地利用分布を説明変数とした一般化線形モデルを作成した。さらに、このモデルを用いて、佐渡市の現在および将来の土地利用分布に基づく生息適地マップを作成した。
ラインセンサスによって観察された82種のうち、23種でモデルが作成できた。ヤマガラやキビタキなどを含む13種が森林か草地に正、もしくは水田に負の応答を示した。トキ、アオサギは森林に負の応答を示した。
本発表では、作成した生息適地マップをもとに、耕作放棄地によって生息地が変化する種について考察する。また、今回の結果を活用した鳥類の多様性評価手法の検討についても報告する。