| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第72回全国大会 (2025年3月、札幌) 講演要旨
ESJ72 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-059  (Poster presentation)

景観の違いが中型食肉目の探索性に与える影響:新奇物を用いた野外実験【O】
Effects of landscape factors on the exploratory behavior of medium-sized carnivores: a novel object field experiment【O】

*田中小百合, 斎藤昌幸(山形大学大学院)
*Sayuri TANAKA, Masayuki SAITO(Yamagata Univ.)

野生動物が人為的環境に適応する要因として、行動特性のひとつである探索性が関連すると予想される。本研究では、人為的環境に適応している中型食肉目であるアカギツネとタヌキを対象に、森林景観に出現する個体と比べ、人為的景観付近に出現する個体は探索性が高いという仮説を検証した。この仮説を検証するために、2024年7-11月および2025年10-11月に山形県鶴岡市の59地点においてカラーコーンを新奇物とするNovel object testを実施した。新奇物の提示処理と除去処理を行い、出現の有無、探索行動の有無、新奇物の周囲1m内での滞在時間を景観要因(農地・市街地からの距離)で説明する解析をそれぞれ行った。解析の結果、キツネは新奇物の提示処理と除去処理において探索性を示した。また、人為的景観付近に出現するキツネでは、森林景観に比べ探索行動を行う個体が多く、仮説が支持された。キツネは新奇物の除去後に跡地を訪問する傾向があったことから、ネオフォビアが新奇物除去後の跡地への誘引に影響している可能性が考えられる。一方、タヌキは新奇物の提示処理に対しやや探索性を示し、人為的景観と比べ森林景観の個体のほうが新奇物に対しやや探索的であったことから、仮説は棄却された。タヌキは人間活動の度合いが大きくなると人間から逃げにくくなることが報告されており、人間活動への慣れによって新奇物を探索しなかった可能性がある。これらの結果は、人為的景観は中型食肉目の探索性に影響を与えることと、その内容は種によって異なることを示唆している。


日本生態学会